痩せている人は認知症になりやすい?なりにくい?

長く高齢者に携わっている中で、ずっと気になっていることがありました。

認知症高齢者の人にはある共通点があるのではないか。

認知症高齢者の方々を見ると、痩(や)せている方が多いということです。

何か理由があるはず、と色々調べてみると興味深いことが分かりましたのでお伝えしたいと思います。

認知症は、日本において高齢者の死因の第4位となっており、急速化する高齢化社会においても大きな問題です。

認知症の原因は、まだ完全には解明されていませんが、生活習慣や遺伝などが関係しているといわれています。

そんな中、近年、痩せている人は認知症になりやすいという研究結果が報告されていることが分かりました。

この研究結果を踏まえて、今回は、痩せている人はなぜ認知症になりやすいのか、その理由と対策について解説したいと思います。

痩せている人は認知症になりやすい?

2022年、イギリスの研究チームが、痩せている人は認知症になりやすいという研究結果を発表。

この研究では、60歳以上の男女約10万人を対象に、30年間にわたって追跡調査を行いました。

その結果、BMIが22未満の人は、BMIが25以上の人に比べて、認知症を発症するリスクが2倍以上高かったことが明らかになったのです。

また、「日本老年学的評価研究(2019年)」によると、研究に参加した高齢者3,696人の内、338人が認知症を発症し、痩せている男性は、そうでない男性の1.04倍・女性の場合 1.72倍認知症リスクが高かったことが分かっています。

認知症発症率が最も高かったのは、①高血圧症を持つ痩せた人、②脂質異常症を持つ痩せた人で、該当する人は注意が必要です。

参考:山梨大学 報道発表

痩せている人はなぜ認知症になりやすいのか?

痩せている人が認知症になりやすい理由は、まだ完全には解明されていませんが、以下の3つの可能性が考えられます。

筋力低下

痩せ過ぎの人は筋力が足りていません。

骨格筋(筋肉)から分泌される筋ホルモンの「マイオカイン」(=生理活性物質【サイトカイン】)の総称。の中に、脳の活動性を高める効果がある「イリシン」という物質があり、筋肉量が減ると、このイリシンという物質も減り、認知症のリスクが高まるとされています。

また、筋力量が減ると代謝が下がり疲れやすくなるだけでなく、血管や内臓、筋肉の機能が衰えるなど、全身へさまざまな影響を及ぼします。

栄養不足による脳のダメージ

痩せている人は、栄養不足になりやすい傾向があります。栄養不足が続くと、脳の機能が低下し、認知症のリスクが高まると考えられます。

ホルモンバランスの乱れ

痩せている人は、ホルモンバランスが乱れやすい傾向があります。ホルモンバランスの乱れが、脳の老化を促進し、認知症のリスクを高めると考えられます。

炎症

痩せている人は、炎症が起こりやすい傾向があります。これは抵抗力の低下が関係しています。炎症が脳に及ぶと、認知症のリスクが高まるともされています。

痩せすぎの人が起こしやすい炎症については以下の関連性があると考えられています。

全身性炎症

痩せている人は、体重が少ないために、体内の免疫システムが過剰に働き、全身に炎症を起こしやすくなります。この炎症が脳に及ぶと、認知症のリスクが高まる可能性があります。

脳内の炎症

痩せている人は、脳内の炎症が起こりやすい傾向があります。脳内の炎症は、脳の神経細胞を損傷し、認知症の原因となる可能性があります。

腸内炎症

痩せている人は、腸内環境が悪化し、腸内炎症が起こりやすい傾向があります。腸内炎症が起こると、腸から脳への炎症性物質が放出され、認知症のリスクが高まる可能性があります。

具体的な炎症の原因としては、以下のようなものが考えられています。

栄養不足

痩せている人は、栄養不足になりやすい傾向があります。栄養不足が続くと、免疫システムが弱まり、炎症が起こりやすくなります。

ホルモンバランスの乱れ

痩せている人は、ホルモンバランスが乱れやすい傾向があります。ホルモンバランスの乱れが、炎症を促進します。

ストレス

ストレスは、炎症を促進すると考えられています。痩せている人は、ストレスを感じやすい傾向があるため、炎症が起こりやすくなります。

痩せている人が認知症を予防するためには、バランスの良い食事や適度な運動などにより、全身性炎症や脳内の炎症を抑えることが重要です。また、腸内環境を整えることも、認知症の予防に効果的と言えます。

痩せている人が認知症を予防する方法

痩せている人が認知症を予防するためには、以下のような方法が有効と考えられています。

バランスの良い食事を心がける

栄養不足にならないように、バランスの良い食事を心がけましょう。特に、タンパク質、ビタミンB12、葉酸、オメガ3脂肪酸を意識して摂取しましょう。

適度な運動をする

適度な運動をすることで、脳の血流が良くなり、認知症のリスクを下げることができます。

禁煙・節酒する

喫煙や過度の飲酒は、脳にダメージを与え、認知症のリスクを高める可能性があります。禁煙・節酒を心がけましょう。

痩せている人は死亡率も高くなる?

実は痩せている人は死亡率も高くなるとされています。

2011年に国立がん研究センターが発表した調査結果によると、太り過ぎ(BMI:30.0~39.9)より、痩せ過ぎ(BMI:14.0~18.9)の人の方が死亡リスクが高いことが分かりました。

太り過ぎの人の方が心疾患が多いイメージがありますが、心疾患の患者さんの中には、太り過ぎの人と同じくらい、痩せ過ぎの人も多いのが実状です。

まとめ

お伝えしたように、痩せている人は認知症になりやすいという研究結果が報告されています。

昨今、ダイエットブームですから、体重を落とす事ばかりに目が向いて、必要な筋肉までも落としてしまう人が増え、認知症の増加に拍車をかけてしまうことも懸念されます。

痩せている人が認知症を予防するためには、バランスの良い食事を心がけ、適度な運動をして筋肉量を維持することが必要です。

また、喫煙や過度の飲酒も認知症リスクが高まることが分かっているため注意しましょう。

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