本当は認知症では無かった、あるグループホーム利用者さんの話

とあるGH(グループホーム)で勤務していた時の話。

余暇時間に、ミツコさん(仮名)の側に腰を下ろして談笑していました。

数ヶ月前に来られた利用者さん。

談笑といっても、ミツコさんは知的な雰囲気で物静かな方なので、他の利用者さんを眺めながら、時折りニッコリしたり、「おもしろいわね」と微笑みながら語りかけて下さる様子。

介護保険や施設のことに詳しくない方のため。

グループホームとは、要介護1以上の方で、医師に『認知症』と診断された方だけが入居できる施設で、9名でひとつの居住単位(1ユニット)になります。

2ユニットの施設だと、9名✖️2=18名が入居する施設になります。

利用者さんの人数に応じて、介護職員等の人員基準が定められています。

グループホームは認知症の方だけを専門的に介護する施設です。

話を戻します。

ミツコさんがふいに、「実はね…」と静かに話始めました。

「私は、お嫁さんに負担をかけたくないからここに来たの。私が居なければ、お互いに気を遣わないで済むから、認知症のフリをして診断書を書いてもらったの。」

とても優しい表情でそうおっしゃいました。

最後にニコッと笑って「これは内緒よ。」と。

胸を打たれました。

毎日、どのような気持ちで生活されていたのか。

ずっと自身の中にだけ抱えていくことがどれだけしんどかったか。

誰かに話して分かっていて欲しかったのだろう。

少しでも気持ちが軽くなったのであれば、聞くことができて良かったと思います。

 

この事実を知れば否定意見はあるかもしれません。

人それぞれ、人生には色々あります。

 

ミツコさんとの出会い以来、認知症(と診断されている方)の方への先入観を持たないようになりました。

感謝しています。

あれから10年以上が経ちました。

忘れたことはありませんよ。

ミツコさん、お元気ですか?

白髪になってからはできないって知っていますか?

-介護の現場
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