介護の仕事をしていると、多くの職員が一度は悩むことがあります。
それが、
「お風呂には入りません!」
という入浴拒否です。
新人職員の頃の私は、
「体が汚れているから入りましょう」
「昨日も入っていませんよ」
「みなさん入っていますよ」
と、一生懸命説明していました。
しかし、結果はほぼ失敗。
むしろ利用者様の表情は険しくなり、拒否が強くなることさえありました。
では、どうすればよいのでしょうか。
実は入浴拒否への対応には、大切な考え方があります。
それは、
「お風呂に入りたくない」のではなく、
「入れない理由がある」
という視点です。
入浴拒否は問題行動ではない
私たちはつい、「なぜ入ってくれないんだろう」と考えてしまいます。
しかしご利用者からすると、入浴を拒否するだけの理由があります。
例えば、
・脱衣所が寒い
・身体が痛い
・疲れている
・恥ずかしい
・急かされるのが嫌
・介助者との相性が悪い
・認知症で状況が理解できない
などです。
つまり、拒否はわがままではありません。
ご利用者様なりの意思表示なのです。
アプローチ① 「入りましょう」をやめる
最初に試してほしい方法があります。
それは、「入りますか?」をやめることです。
例えば、
「お風呂に入りましょう」と言うと、ご利用者様には「今すぐ入れ」と聞こえることがあります。
そこで、
「今入りますか?昼食後にしますか?」
と聞いてみてください。
ポイントは、入るか入らないかではなく、いつ入るかを選んでもらうことです。
選択肢があるだけで反応が変わることがあります。
アプローチ② 清潔ではなく快適を伝える
介護職はつい、
「汚れているから」
「清潔保持のため」
と説明しがちです。
しかしご利用者にとっては、清潔よりも快適の方が魅力的です。
例えば、
「温まると気持ちいいですよ」
「今日はお湯がちょうど良いですよ」
「肩が楽になるかもしれませんね」
などです。
人は義務よりもメリットに動かされます。
アプローチ③ 頼る
認知症ケアで非常に効果的なのが、頼ることです。
例えば、
「お風呂のお湯加減を見てもらえますか?」
と言います。
ご利用者は、「それなら」と浴室まで来てくださることがあります。
そこで、
「ちょうど良さそうですね」
「せっかくなので温まっていきませんか」
という流れです。
人は命令されるのは嫌でも、頼られることには応えたくなります。
アプローチ④ 昔の役割を活かす
ご利用者には長い人生があります。
元主婦なら、
「お風呂場を見てもらえますか?」
元大工なら、
「設備を確認してもらえますか?」
元教師なら、
「教えてください」
役割を思い出していただくことで、自然な流れが生まれることがあります。
アプローチ⑤ 一度引く勇気を持つ
拒否された時に、何度も声をかけていませんか?
「入りましょう」
「入りましょう」
「入りましょう」
これでは職員もご利用者も疲れてしまいます。
そんな時は、
「分かりました。また後で声をかけますね」
と一度引いてみてください。
不思議なことに、しばらくすると気持ちが切り替わり、受け入れてくださることがあります。
本当に見るべきなのは拒否ではなく理由
入浴拒否があった時、私たちは拒否そのものに目が向きがちです。
しかし本当に大切なのは、
「なぜ拒否したのか」
です。
寒いのか。
疲れているのか。
痛みがあるのか。
不安なのか。
認知症によって状況が理解できないのか。
理由が分かれば支援方法は変わります。
まとめ
入浴拒否への対応で大切なのは、ご利用者を説得することではありません。
利用者様の立場に立って、拒否せざるを得ない理由を探すことです。
そして、
・選択肢を提示する
・快適さを伝える
・頼る
・役割を活かす
・一度引く
この5つを意識するだけでも、現場の空気は大きく変わります。
介護は技術だけではありません。
ご利用者の気持ちを理解しようとする姿勢こそが、最も効果的なケアなのだと思います。
