その昔話は「自己肯定感」を守るための大切な時間かもしれない

「その話、何回目だろう。」

高齢の親や利用者さんと接していると、同じ話を何度も聞くことがあります。

若い頃の仕事の話。

子育ての苦労話。

戦争体験。

地域で活躍していた頃の話。


介護職として働き始めた頃、

「また始まったな」

と思うこともありました。

しかし、ある時から私は考え方が変わりました。

高齢者が繰り返しているのは「昔話」ではなく、

自分の人生には意味があったと確認する作業

なのではないか、と。

人は年齢とともに役割を失っていく

若い頃の私たちは、仕事や家庭、子育てなど、さまざまな役割を持っています。

  • 会社では部下を指導する
  • 家族を支える
  • 子どもを育てる
  • 地域活動に参加する、

毎日の生活の中で

『自分は誰かの役に立っている』

という実感があります。

しかし高齢になると状況は変わります。

退職する。

子どもは独立する。

運転免許を返納する。

体力も少しずつ低下する。

すると、それまで当たり前だった役割が少しずつ減っていきます。

自己肯定感は「誰かの役に立っている感覚」で支えられている

心理学では、自己肯定感は単純な自信とは少し違うと考えられています。


大切なのは、

『自分には価値がある』

と思える感覚です。


ところが高齢期になると、役割の喪失によって

「自分はもう必要とされていないのではないか」

という不安が生まれやすくなります。

その時、人は過去に目を向けます。

「昔は〇〇だった」が増える理由

高齢者が繰り返す話には特徴があります。

  • 昔は会社で責任者だった
  • 子どもを立派に育てた
  • 地域の世話役をしていた
  • 商売を頑張った
  • 苦労して家族を守った

よく聞くと、どれも


『自分が誰かの役に立っていた話』

なのです。

これは自慢話ではありません。

本人にとっては、

『私は価値のある人生を生きてきた』

ことを確認する大切な作業なのです。

同じ話を繰り返すのは、自己肯定感を守る行動かもしれない

私たちは落ち込んだ時、過去の成功体験を思い出すことがあります。

  • 試験に合格した
  • 仕事で評価された
  • 誰かに感謝された

すると少し元気になります。

高齢者も同じです。

何度も同じ話を語ることで、脳の中で

「自分は頑張ってきた」

という感覚を再確認しています。

言い換えれば、

『昔話は自己肯定感を保つための行動』

とも考えられます。

介護現場で見えてくること

介護の現場では、同じ話を何度もする利用者さんがいます。

しかし不思議なことがあります。

✔︎話を最後まで聞いてもらえた日は穏やか。

✔︎途中で話を遮られた日は不機嫌。

そんな場面を何度も見てきました。

これは情報を伝えたいのではなく、

『自分の人生を受け止めてほしい』

という気持ちがあるからかもしれません。

認知症の方にも共通する部分がある

認知症になると最近の記憶は弱くなります。

しかし昔の記憶は比較的残りやすいと言われています。

だからこそ、人生の中で重要だった出来事が繰り返し語られます。

その話の中には、本人が大切にしてきた価値観や誇りが隠れています。

私たちはつい、

『また同じ話』

と受け取ってしまいます。

でも本人にとっては、

今の自分を支える大切な記憶なのかもしれません。

「またその話?」が自己肯定感を下げることもある

家族としては忙しい毎日の中で、何度も同じ話を聞くのは大変です。

しかし、「もう聞いたよ」「またその話?」と繰り返されると、高齢者は無意識に

「自分の話には価値がない」

と感じることがあります。

もちろん毎回長時間聞く必要はありません。

ただ、

「そうだったんですね」

「大変だったんですね」

と一言返すだけでも違います。

人は、自分の人生を認めてもらえると安心するからです。

私たちも同じことをしている

考えてみれば、若い人も同じです。

友人と会えば、学生時代の思い出を何度も話します。

成功体験も失敗談も繰り返します。

それは、

『その出来事が自分という人間を形作っている』

からです。

高齢者の昔話は、その積み重ねが長くなっただけなのかもしれません。

まとめ

高齢者が同じ話を繰り返す理由は、単なる物忘れではありません。

そこには、

  • 自分の人生を振り返る時間
  • 失われた役割を補う働き
  • 自己肯定感を保つための確認作業
  • 「私は価値のある人生を生きてきた」という再確認

が含まれています。

もし身近な高齢者が同じ話を始めたら、「またその話?」ではなく、

『この人は何を大切に生きてきたんだろう』

と考えてみてください。


その繰り返しの中には、人生を支えてきた誇りや、自分らしさを守ろうとする気持ちが隠れているのかもしれません。

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